おかずのいらないコシヒカリの【コシヒカリ農場阿部文吉】
●小さな農家が生き残るには手間暇をかけても美味しい米を作らないと生き残れない。
私は栽培面積3.8ha(ヘクタール)の小さな小さな農家です。
現在米作り農家が生き残るには最低でも10haの規模でないとだめといわれています。その為には基盤整理された大きな田んぼで大型の機械を使って少ない人数で作業しないと採算が合わないと思います。(ちなみに大型のコンバインは1千万円以上します。)
私のような小規模農家は小さな田んぼがあちこちに散在しています。農業機械も中古や離農した人から譲り受けて修理をしながら動かしています。
つまり大規模な生産者は効率を上げることによりお米1㎏当たりのコストを下げて採算をとることを経営目標とします。
片や私はコストを下げるのではなくいかに美味しいお米を作ってその価値を認めてもらって購入して頂く事を経営の目的としています。
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●美味しい米を収穫することにベストを尽くしています。
阿部さんの米は「無農薬?有機米」とよく聞かれます。
私の米は田植え時に箱処理剤と除草剤を使っています。又、肥料は有機と無機、それらを組み合わせて使っています。
私はサラリーマン時代、農薬を使わない野菜、添加物を使わない食品を扱う部門にいたことがあります。お客様はマニアックな方が多く、農薬や添加物を使わない食品を求めておられました。しかしそれらは高く味も良くありませんでした。ご自分の食生活すべてをこれらで賄うには当然コストがかかり長続きしている人はごく限られていました。
食品は薬やサプリメントとは違いますので最終的には美味しくなければ消費者は買わないということをそこで学びました。
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系列の会社に弁当工場があり、そこに一時期出向していました。
私の住んでいる燕三条地区には多くの金属関係の製造会社があり、そこで働く人たちの昼食にお弁当をお届けするのです。
この弁当業界【産業給食)、衛生的な大きな設備投資をした会社から町のお惣菜屋さんが届ける弁当まで実に多くの売り手が販売競争を繰り広げている厳しい世界なんです。
ちょっと油断しているとすぐにお客様をとられてしまうんです。
どうやったらリピート注文をもらい、他社と差別化でき且つ利益を確保できるか、しのぎを削ってましたね。
ライバルの弁当会社が、攻勢をかけてきたある会議の時でした。
我々はおいしい弁当とは何かをテーマに「おかずをどれだけ魅力的にするか」喧々諤々のミーティングを重ねている時、ボスが打ちきるようにひとこと言いました。
おいしい弁当とは、おかずではない米だ!
「おかずのいらないごはんを出せば良いんだ」
一瞬の沈黙が流れました。
当時のお弁当の卸価格は確か300円~400円位だったと思います。
その時になんと「魚沼産のコシヒカリ」を使ったんです。
産業給食ではとても考えられない事です。
もちろん他社を圧倒していきました。
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又、ある時期「こだわりの食品」を販売する部門で働いていました。
食品添加物や農薬ををつかっていない食品を販売していました。
お客様や営業の人からよく言われました。
「この食品は○○がはいっているね。完全無添加ではないね」
「野菜は無農薬でないとだめだよ」
ではそれをクリアするとお客様から買って頂けるかと言うとそうでもないんです。
消費者は「おいしくなければ買わない」んです。
食品はもちろん安全性も大事ですが
「食べ物はおいしくなければ売れない。」
その時強く思いました。
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それらを経験して、いつか会社を辞めたら、「おかずのいらないコシヒカリ」を育ててみたいと漠然と思っていました。
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それまで胸の中に温めていた「おかずのいらないコシヒカリ」に本腰を入れる事としました。
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3年前、ひょんなことから、米問屋の勉強会に出ました。その時に出会ったのが小祝政明氏。
それまで聞いていた米作りとはまるで違う考え方に衝撃を受けました。
小祝政明氏との出会いが、本格的に米作りにのめり込むきっかけとなりました。
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私がサラリーマン時代お世話になったのが、三条市に本社を置く「オーシャンシステム」。
そして同じく三条に本社を置くストーブでは日本一のコロナが、共同でスーパー・弁当工場から出る食物残さから肥料を作る会社を立ち上げたのです。
なんでストーブのコロナがと思われるでしょうが、コロナはの内田社長が従業員の社員食堂で使う米を安全でおいしいものを提供したいと思っていたのでした。
そのコロナビオリタと言う会社が作る、食物残さ肥料を使ってコシヒカリを作る事になったのです。
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この肥料の力はすごいんです。
初めてその工程を見た時、ビックリしました。
その時両手でズッシリとくる大きな生鮭1本を分解する機械の中に入れ米ぬかや醤油の搾りかす等と一緒に発酵菌を入れて70~80度cに加熱すると7~8時間であとかたもなくなりパラパラとした粉末になったのです。
この発酵菌の力には本当に驚きました。
これを土に入れたら土壌を分解し活性化するのが確信できました。
直ぐにこの有機アミノ酸肥料を使った米作りに挑戦しようと決心しました。
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私は米作りの素人でした。今思うとそのことが良かったのだと思います。
その後、多くの米作りの名人を訪ねいろんな事を教えていただきました。
各々、田んぼの条件、作り方、考え方も様々でした。
多くの人の話を聞き取り入れられるものは取り入れて行きました。
私の田んぼに合わない作り方もありました。そういった方法は捨てていきました。
そうするとだんだんと「収斂」されてくるんですね。
阿部文吉としての米作りの形が出来てくるんです。