農場長の阿部です。小さなコシヒカリ農場です。
規模の拡大をせず収量のアップも追わず、ひたすら美味しいコシヒカリを追及しています。
田んぼの風に吹かれて仕事をしているのが無性に好きです。
コシヒカリ農場は新潟県燕市にあります。2018年に放送された高視聴率ドラマでおなじみの土地です。
「ドラマの中で出てきた燕市の、お米が食べてみたくて…」とご注文くださったお客様もいます。
新潟は米どころ。
多くの農家と切磋琢磨しながら、こだわりが詰まったおいしい米作りに励んでいます。
炊きあがったときにお釜から沸々と湧き出る湯気。
美味しいご飯は炊きあがりの香りでわかります。
おいしい香りに誘われ、一口、口に入れたときに米粒から出る甘みが広がり、噛むほどにうま味が広がります。
本当のおいしさは炊き立てよりも冷めたときにわかります。
コシヒカリ農場のコシヒカリはご飯が冷めたときこそ実感できます。
「おかずのいらないコシヒカリ」というキャッチコピーをつけるにあたり当初ためらいがありました。でも多くのお客様より「美味しかったよ。看板に偽りなし。」と言う声を多くいただき、今では確たる自信となっております。どうかこの機会に一度お試しいただければ幸いです。
私はサラリーマン時代、食品のバイヤーをやっていました。あるとき豚肉の食べ比べをしました。
豚の餌にさつま芋、米、一般的なトウモロコシを食べさせた、3種類の豚肉でした。
さつま芋で育った肉は甘く、米で育てた肉は脂肪が軟らかく、トウモロコシの肉は一般的な味がしました。食べるものによって肉の味は随分と違うものだと思いました。
また、鶏卵の黄身の色を濃くするのに飼料にパプリカ等の色素を入れることがわかりました。
養殖の魚も肉の臭みをとるのにハーブを入れたり工夫していました。つまり全てのものは食べる(摂取する)モノにより食味や品質に違いが出てくることを思い出しました。
米の味もおんなじではないかと考えました。
米は田んぼから根で栄養分を吸い稲体を作り、葉っぱで光合成を行い籾(もみ)に栄養分を貯めます。
それならば田んぼを栄養分とミネラル分たっぷりにし、光合成を活発に行える健康な稲体を作ることができれば、おいしいコシヒカリが収穫できるのではないかと。
2014年から有機アミノ酸肥料を田んぼに入れてきました。スーパーや給食会社から出る魚のアラや肉の切れ端、野菜屑等に醤油の搾りかす、米ぬか鰹節の搾りかす等を入れて発酵菌で分解して作った肥料です。
このリサイクル肥料によって田んぼがみるみる変わってきました。
翌年から窒素などの栄養分の他にミネラルと総称される微量要素が稲の生育に欠かせない事を知り、土壌分析を行い田んぼに施しています。
この肥料、実に良い匂いがします。なにせ原料に醤油と鰹節の搾りかすが入っています。
春、田んぼにこの有機アミノ酸肥料を撒くとカラスに食われてしまうんじゃないかとヒヤヒヤします。
撒布後すぐにトラクターで田起こしするのは言うまでもありません。
何せ素人に毛の生えたようなレベルですから、これだという栽培方法がある訳ではありません。
あそこに米作りのうまい人がいるよと聞けば、教えを請いに行きました。
あの人のコシヒカリは評判いいよと聞けば、田んぼに行きジッと目を凝らして観察しました。
最初はなかなか自分のモノになりませんでしたが、ここ最近では稲姿を良~く見ていると何となく稲の生育状態がわかるようになりました。
ただそれに対してどのような手を打つかは、また別の次元です。
水と養分をたっぷり吸収する豊富な根量、その養分をグングン吸い上げる太い茎、日光が充分あたるように株元を開帳させ、葉っぱの枚数を1枚でも多く、葉幅を1ミリでも拡く、葉肉を厚く育て光合成を活発に行う稲姿を実現しています。
昔の人に聞くとまだ肥料が無かった頃、ニシンの魚粕を田んぼに撒いており、その頃の米はうまかったと言います。
阿部文吉ではうま味を追求して田んぼに昆布や鰹節で作ったアミノ酸肥料をたっぷりと施こし、甘味を増すためにミネラルと呼ばれる微量要素も田んぼに応じて入れています。
穂が出る前には海藻と鰹節のエキスを稲に与えています。
だからほんのり甘くてもっちり旨い、しかも大粒の「おかずのいらないコシヒカリ」が収穫できるのです。